「The My Way」・人生を紡ぐ仕事「洋服を通じて時代を紡いでいく―」 オーダースーツ専門店 オーナー 清水真

1983年 広島県生まれ
ブランドファッション店勤務を経てThe My Way 設立
現在プロ野球選手をはじめプロアスリートやミュージシャンなど数多くの著名人顧客の仕立を手がける。

ファッション業界に携わる中でオーダーメイドという方法に出会った清水真氏。さまざまな体験から得たスキルを活かすためにスーツやタキシードのオーダーメイド専門店として独立しました。個人の口コミによって少しずつ広まり、スポーツ選手や芸能人などのオーダースーツを手掛けるまでになった現在。多忙を極めるそんな清水氏が求める理想の庭とはどんなものなのか、お話をお聞きしました。

緊張をほぐすコミュニケーション
ストーリーのあるご提案を

 広島でオーダースーツやオーダータキシードの企画販売をしています。店名の「The My Way」は自分らしい生き方や流儀を貫く人のための店でありたいという思いから名付けたもの。自分らしさをテーマに「結婚式にタキシードを着たい」「合わなくなったスーツをまた着たい」といったご要望に合わせたご提案をさせていただいています。

 身体にフィットした装いによって、人からの見え方も変わるんですよ。きれいな姿勢や立ち振る舞いなどの印象が変わると、人間関係も自然と良い方向に向かっていく気がします。ただ、初めてご来店いただくお客様は知らずと緊張で身体が固まっています。その緊張状態を解くためにコミュニケーションを大切に。リラックスした状態で採寸を行うことで、身体に合ったものが仕上がります。また、じっくりとお話をお聞きすることで、オーダーしようと思ったきっかけやそのスーツへの想いなどがお聞きできるんです。例えば、祖父や父から受け継いだスーツも作り直したいという理由やストーリーによって、サイズを直して自分が着る、子ども用のベストに直す、など一番そのスーツが生きるご提案をと考えています。

自分らしさを知る
洋服に向き合う姿勢の変化

 もともと洋服が好きでアパレル店員として働いていました。季節ごとに新作の洋服を着て、流行に合わせたファッションをすることが当たり前の業界、私ももちろん、最初はそう思っていました。新しいものを次々と買っていただくということが、お店にとっても必要なことですし…。ただ、お客様と会話をする中で、「流行が変わって着なくなった」「最近買ったばかりだけど捨てた」という声を聞くこともあり、売って終わりの現状にモヤモヤとした気持ちが残っていたのも事実。お客様にとって、大切に思えるもの、長く着られるようなものを勧めたいと考える中で、オーダーという方法があることに気づきました。
スーツに限らず、古くても良いものには物語があります。「どのような背景で作られたか」「どのような思いで作られたか」という作り手の気持ちや購入時の気持ち、そういうものを大切にしたい、というふうに洋服への向き合い方が変わっていったんですよね。

後世に残したい技術と文化
職人の取り組む姿勢に憧れる

 今は営業前の時間を使って、洋服を仕立てる修業をしています。オーダースーツ、と一言で言っても、高い技術を持った職人がもう少なくなってきていて、60歳〜70歳と年齢が高いことが現状です。現在仕立てを学んでいる師匠である職人の下に初めて出向いた時には、「今の時代、この業界は儲からんよ」と言われました。今は海外生産が主流で、海外生産であっても、価格が安くそれなりにクオリィティーの高いものが仕上がってきます。ファッション業界にいた身としては、そんなことは分かっている。けれど、一つひとつ自分の手で仕立てる職人の姿が、単純にかっこよかった。しかも職人の年齢が父親と同い年で、私と同じ誕生日。それを聞いたとき、正直、運命も感じました(笑)。それからというもの、職人のもとに出かけては技術を磨く日々です。

 職人からの教えのもと、祖父から父へと受け継がれてきたコートを私のサイズに手直ししたんです。約60 年以上前のコートでしたが、しっかりと作られていて、縫製技術の高さに驚きました。半世紀以上着られるものがあることを実感し、長く愛着を持って着られる技術を身に付けられるように真摯に向き合っています。また、この技術を繋いでいくことも私の使命だと感じています。

疲れた体を癒す空間だから
脳裏に浮かぶ懐かしい庭がいい

 自分の庭をつくるなら、一番はリラックスできる空間がいいですね。仕事のことは忘れて、その日の疲れを取れるような。でも、たまに仕事に関係するアイデアが閃くような空間でもありたいです。イメージするのは、国民的アニメで見た昭和を象徴する庭。縁側のある家で、庭に盆栽が置かれていて、それを休日に手入れするような。シンプルなほうがいいかな。だいたい広さは、横5メートル縦4メートルぐらいのイメージで、小さなテーブルに椅子が2脚。地面に砂利を敷いて、フェンスとか木を使って、なるべく自然なものを活かしたいです。時代を感じさせるような雰囲気の空間で、物は少なくスッキリと。夜になると綺麗な星空を見ながら、お酒を飲みたいですね。
あとは、バスケットコートのあるような庭には憧れます。学生時代にバスケットに夢中で、そのとき読んだ漫画の中で家の庭にバスケットコートがあり、絶対に欲しいと思いました。アクティブに体を動かしたいときに気軽に楽しめたらいいですね。庭で過ごすシチュエーションにもよりますが、自分がリラックスできる空間にしたいです。

コミュニケーションから輪郭を描く
仕事へのスタンスは変わらず

 もし自分がガーデンデザイナーなら、ちょっとした疑問も投げかけるようにして、その方の人となりやライフスタイルなども伺います。さまざまな角度からお聞きした、身近な情報からお客様が描いている庭の形をイメージします。そうすれば理想の庭に近づけるのではないかと。理想は、最終的に「あなたにお願いしてよかった」といっていただくこと。だから、やることは、今の仕事と変わらないと思いますね。ガーデンデザイナーの方々と同じように、お客様との密なコミュニケーションにより想いをひとつひとつ紡いでいく。そしてその繋がりから生まれるものをかたちにしていきたいと思っています。

清水さん

世代を超えて良いものを長く着るという文化を受け継ぎ、残していきたいと話す清水さん。そのために一人ひとりの関わりを大切にし、洋服から物語を紡いでいくといいます。清水さんの描く庭には、洋服づくりと同じく、どこか懐かしく温かみのある空間への思いがありました。

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